PickUp #266  2004.04.14   <- Prev  Home   Next ->


No.266 ★仝 ゲーセンで起きたちょっといい話スレ 第4章 仝★ より

170 :ゲームセンター名無し :04/03/15 17:25 ID:???
ちょっと長くなりそうなんだけど、どうしても書きたい話があるんで書かせてくれ。

漏れが高校に入学したのは、ちょうどネオジオが大ブレイクした年だった。
学校帰りにちょくちょく対戦する機会もあって、
漏れは格ゲーを通して同じ高校の別のクラスの奴ら4〜5人とすぐに仲良くなった。
中でもHとは気が合って、漏れもHもその年の夏に出たサムスピにどっぷりはまることになる。
Hは覇王丸、漏れはナコルルが持ちキャラで、Hは中斬り→弧月斬につなぐのと、
間合いを見計らって遠立ち大斬りをぶち当ててくるのが妙にうまかった記憶がある。
他の連中がやっと必殺技を出せる程度だったってのもあるけど、Hとの対戦が一番面白かったし、
漏れもHも、他のどのゲームよりもサムスピが好きだった。

その頃通ってたゲーセンの駐車場脇にはプレハブの小さなラーメン屋があって、
金があるときは(と言っても月2〜3回だ)、対戦した後によくチャーシューメンを食べて帰った。
そこの親父さんっていうのがずいぶんと気さくな人で、だんだんと顔見知りになるうちに
「高校生じゃ小遣い少ねえしなー」とか言って普通は6枚のチャーシューを内緒で2枚多くサービスしてくれたりした。

あの頃っていうのは本当に対戦が楽しくて、ゲーセンに寄るために毎日学校に行ってたって言っても嘘じゃなかった気がする。

173 :170 :04/03/15 17:58 ID:BC2BYsW+
それからゲーセン通いが2年続き、漏れたちは高3になっていた。
その間ガロスペもKOFももちろんはまったけど、
やっぱり漏れもHもサムスピがベストってことに変わりはなくて、
KOF’95の合間に相変わらず真サムの対戦をはさむ漏れたち2人に、仲間も
「お前らよくやるよなあ、飽きないの?」と皮肉るくらいだった。

そしてこの年の秋、サムスピ1年ぶりの新作・斬紅郎無双剣がリリースを控えていた。
10月も半ばを過ぎると、漏れもHもMVSのオペレーターさんがインカムの回収に来るたびに
「斬紅郎いつ入りますか?」としつこく質問していた。
はじめこそ「うーん、まだわからないなぁ」と流していたオペレーターさんだったが、
何度も同じことを聞く漏れたちに根負けしたか、最後はとうとう
「11月7日前後になると思うよ」と入荷日を教えてくれた。
今思うとかなりうざいガキだし、もしかするとはじめのうちは本当に日取りがわからなかったのかもしれない。

ともかく予定日を聞いた漏れたちは、どきどきしながら11月7日を待った。
だが、あれは、忘れもしない11月3日。昼すぎに漏れはゲーセン仲間のSから電話を受けた。
その内容は、とても信じられないものだった。

「Hが、ダンプと衝突事故で病院に運ばれたって…」

177 :170 :04/03/15 21:36 ID:???
原付ごと吹っ飛ばされたHは、頭部を強打して即死だったらしい。
現場は周りを田んぼに囲まれた「見晴らしのいい交差点」て感じの場所で、信号はなかった。
2日夜、Hの兄貴は友達と飲みに出掛け、3日朝、電車で最寄駅まで戻り、家の人に迎えに来てもらおうと自宅に電話を入れた。
そのとき電話に出たのがHで、「オレの原チャ駅まで乗ってきてくれ、帰りは2ケツするべ」ということになったらしかった。

事故の原因は双方の一時停止無視、ダンプの運転手は足元に落としたタバコに気をとられていた。
Hはというと無免許運転、しかもノーヘル。漏れの知る限り、Hは飲酒・喫煙はもちろんのこと、
無免許運転など一度もしたことはない(はずだった)。このときばかりは「魔が差した」としか言い様がない。
通夜で見たHの顔は、上半分から左側面にかけて包帯でぐるぐる巻きにされており、顔はほとんど隠れた状態だった。
損傷が激しく、そうでもしないととても見れたものではなかったと、後で聞いた。

通夜と告別式の2日間、漏れも友達も人目をはばからずただただ泣いた。恥ずかしいとか、そんなの考えなかった。
高校生以上にもなって人前で声をあげて泣くなんて、あれが最初で、もしかすると最後かもしれない。

179 :170 :04/03/15 22:09 ID:???
数日後、仲間の一人から予定通り斬サムがゲーセンに入荷したと報告された。
でも漏れは、どうしてもサムスピで遊ぶ気にはなれなかった。
サムスピで遊んだら、きっともういないHのことを思い出してしまうだろうから。
漏れはゲーセンに行くこと自体を避けるようになり、仲間も気を遣って漏れを無理に誘わなくなった。

そうこうしているうちに推薦入試が始まり、年が明け、センター試験が終わった。
2月に入ると3年生は自由登校期間に入り、漏れは仲間と顔を合わせる機会を失った。
それから結局漏れはゲーセンに足を踏み入れることなく卒業式を迎え、
進学するやつ、浪人するやつ、だれ一人として同じ進路に進む仲間はいなかった。

斬サム初プレイは3月も終わりに近づいた頃で、大幅に変更されたシステムに違和感を覚えた。
防御崩しから連続技の即死ゲー、こんなのサムスピじゃない。
漏れは1年でいっぺんにいろいろと大事なものを失くしてしまった気がして、ひどくさびしかった。

197 :170 :04/03/17 20:43 ID:???
大学生になった漏れは、すっかりゲーセンから遠ざかっていた。
大学卒業後は、1年のフリーター生活を経て地元の小さな会社に就職した。
仕事も早3年目。いまや四捨五入すれば三十路、立派なオサーンだ。

だが昨年末、何気なくのぞいたこの板で、漏れは初めてサムスピの新作が出ていることを知った。
いてもたってもいられなくなり、かつて通いつめたあのゲーセンへと車をとばした。
でもそこで漏れが見たものは、空っぽの建物と「貸し店舗」の張り紙だった。
漏れが知らないうちに、ゲーセンは潰れてしまっていた。

約8年ぶりとはいえ、そこに行けば存在して当たり前という思い込みが
さもあっさりと覆されてしまったことに、漏れは少なからずショックを受けた。
漏れはとにかく当時を知る人と会いたくて、次に例の駐車場横のラーメン屋に入ってみた。
「こんばんは…」と緊張気味に挨拶すると、驚いたことに親父さんは漏れを覚えてくれていた。

199 :170 :04/03/17 21:17 ID:???
漏れの近況を報告した後、親父さんと少し思い出話をした。
自然な話の流れから、親父さんはいつも漏れと一緒だったHの話題を振ってきた。
漏れはHとの日々がフラッシュバックしたのと、ああでもゲーセンはもうないんだ、というのとで
頭の中がごっちゃになって、「あいつは高3の秋に事故で…」と言葉に詰まった。
それで親父さんは、大体のところを察したようだった。

その後親父さんが黙って出してくれたチャーシューメンは、昔と変わらず
やっぱりチャーシューが8枚乗っていた。今度はうれしくて涙が出た。
店を出るときに「ありがとうございました」とお礼を言うと、
「生きてりゃいいことも悪いこともある。くよくよすんな、頑張んな」と笑って返された。
漏れはなんだかあったかい感じで店を後にした。

サムスピはシリーズを重ねるごとに変わっていった。SNKはプレイモアになっていた。
でもそれだけじゃなく、漏れ自身も変わっているし、これからも変わっていくんだろうと思う。
年が明けてから、漏れは細々とではあるが、別のちょっと遠いゲーセンに通いはじめた。

変わっていくものがあり、失うものもたくさんある。
それに比べればわずかではあるにしろ、得るものだってあって、
たとえば親父さんのやさしさみたいに、ずっと変わらないものもあるのかもしれない。
うまいこと言葉にはできないんだが、漏れがゲーセンに通うのは、たぶんそういうものがあるからなんだと思う。

そして、今度はいつになるかわからないけれど、
きっとまたいつか、漏れは親父さんの店でラーメンを食いたい。




     

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