No.177 もしも車が話せたら その3 より
- 271 名前:70スープラ 投稿日:02/08/21 23:18 ID:bYpGbt8F
- おいおい、誰だよオレのエンジンを動かすやつは。
オレはもうゆっくり終わりたいんだ。
弟の80もこの夏でおしまいになるってのにオレに乗るとは酔狂なやつだな。
「おぉぉ!いいぞいいぞスープラ!かっこいいぞ!」
そんな車内で叫ぶなよ。もう時代遅れの車だぜ?
オレの何処がいいんだよ?あ?
「オレが初めて買った車なんだから大事にするぞ!」
だからそんな宣言されてもねぇ。
って、初めて車買ったのかよ!恐ぇぇ〜・・・
んで、向かう所はカー用品店か。
おおかたワックスとかシャンプーとか買い込むんだろ?
今までのオーナーはみんなそうだったけどさ。そんな頻繁に洗わないだろが。
・・・ん?なんで整備ドッグに向かうんだ?
「すいません、オイルっつーオイル全部と、ありったけの消耗品、交換してください!」
あ!?何考えてんだよオメェ!こんなぼろにカネ注ぎ込むのか!?
あ・・・でも新しいオイルって流れ込む瞬間が気持ちいいんだよなぁ・・・
なんか調子がよくなったぞ。さぁ帰ろうぜ。
「よし、次はディーラーだ!」
・・・
「すいません、この車の部品××と××と××と・・・」
やっぱりか。しかし随分部品を頼むなぁ。そんなにボロだったか?オレ。
もういいだろ。帰ろうぜ。
そうだ。その国道を走って行けば帰れるぞ。
「しかし・・・コイツももうゆっくり休みたいだろうに、新しいオーナーが乗るなんて大変だな」
・・!オレの考えてた事が分かるのか!?
「たぶんオレが最後のオーナーになるだろうからさ、つき合ってやってくれよ」
ちっ、しょーがねーな。
そんなに速くはないけどお前にいい思い出たくさん作らせてやるか。
ってオイ!今の信号、左折だろーが!このバカ!!
- 494 名前:思い出 1/2 投稿日:02/09/12 21:26 ID:GxVcI9rB
- 初めてお会いしたときのこと憶えていますか?
”あ・・・、この人が二番目のご主人になるのかな?優しい人かな・・・
隣にいるのはお子さんですか?クリクリおめめでかわいいね!
あら?3歳なの?私と同い年じゃない。よろしくね!”
私を引き取って帰る車中は、お二人ともご機嫌でしたね。
家に着くともう一人小学生のお兄ちゃんがいて、ニコニコ顔で出迎えてくれました。
でも奥様だけはどこか浮かない顔・・・
”私を買うことで奥様ともめちゃったのかな?”なんて心配しましたけど・・・
それでも三日後くらいに奥様がサードシートの左側にお座りになって、
満足そうに微笑んだときは安心しました。
あれからその席は奥様の指定席になりましたね。
それからというもの、ご家族でいろんなところに行きましたね。
なかでも、毎年恒例の海!!本当に楽しかったなぁ。
そうそう、3番目のお嬢さんが生まれたときのこと!
退院の日、ご主人がお嬢さんを抱いて私に近づいてきたときの顔、今でもはっきり憶えてます。
かなり緊張して、でも目尻が下がっちゃって、私ちょっと笑っちゃいました。ごめんなさい。
でもあの帰り道、私も小さな命を乗せてだいぶ緊張しましたけど・・・。
そのお嬢さんも、もうすぐ幼稚園の年長さん。
確かに時は流れているんだな・・・と感じています。
ご主人はいつも私を綺麗にして下さっていました。本当に感謝してます。
身体のことも気を使ってくれて。
同年代からはいつも羨ましがられていたんですよ。私もちょっと自慢でした。
- 495 名前:思い出 2/2 投稿日:02/09/12 21:26 ID:GxVcI9rB
- でも、あの日、・・・・・
ちょっとした気の緩みから私の身体の右側をかなり大きく傷つけてしまって・・・。
ご主人の落ち込んだ顔を見ているのが辛かった。
買い替えの話が出たときも、最後までご主人は反対してくれて・・・。
お嬢さんの目が潤んでいるのがわかりました。
「あの車は10年間いろんなところへ連れて行ってくれた。良く走ってくれたよね。
でも、きっと疲れているんだと思う。かわいそうだよ。もう休ませてあげよう。」
奥様のこの一言で、ご主人の気持ちが大きく揺れたのがわかりました。
真ん中のお兄ちゃんは無言で私に近寄ってきて、傷ついた私の身体を何回も手でさすって、
そのたびに小さなため息を・・・
”ありがとう。でも、でもね、もういいんだよ・・・ありがとう・・・”
心の中で何度もつぶやきました。無口だけど心の優しい真ん中のお兄ちゃん。大好きでした。
お別れの朝、記念に写真を撮っていただきました。その日も相変わらずピカピカでした。
学校に遅れちゃうのに、真ん中のお兄ちゃんが一緒に写りたいって・・・
”本当にお別れだね。一番最初に迎えに来てくれて、最後も見送ってくれて、本当にうれしいよ。
今まで優しくしてくれてありがとうね・・・楽しかった。
さぁ、もう学校に行きなさい。遅刻しちゃうぞ!・・・・・ありがとう・・・さようなら・・・・・”
バックミラーに写った真ん中のお兄ちゃん・・・・・
一人ぽつんと立ったまま・・・・・
だんだん小さくなっていく・・・・・
本当に愛されていたんだなぁと思いました。
かけがえのない家族でした。
本当にほんとうに大好きでした。
たくさんの思い出をありがとう。
・・・・・さようなら・・・・・。
- 527 名前:白いFC 投稿日:02/09/16 07:11 ID:0MerzrMs
- 初めて会った日のこと、まだ覚えてる?
「呼んでた」って、わざわざ道を引き返して、見に来てくれたんだってね。
ごめんね、実はあんまり覚えてないんだ。
でも、あなたはそれから何回も来てくれたっけ。
夜中に来てくれた時は、びっくりしたよ。
警報装置、鳴らなくてよかったね(笑)。
試乗の時、あたし、止まっちゃったでしょう?絶対印象悪いから、
あなたのところには行けないだろうって、あきらめてたの。
だから、あなたが迎えに来てくれた時は、本当に、嬉しかった。
- 528 名前:白いFC 投稿日:02/09/16 07:22 ID:0MerzrMs
- 結局、一緒に走れたのは一年ぐらいだったかな。
遠くには行けなかったけど、毎日のように峠に通って、楽しかった。
一番最初の日は道が凍ってて、大慌てしたっけ。
シフトミスして壁に一直線、なんてこともあったね。
そんなことを繰り返すうちに、あなたはどんどん上手くなっていった。
でも、維持費、きつかったんでしょう?生活費削ってたの、知ってたよ。
毎日あなたを乗せてるんだもん、少しづつ痩せてくの、分かってた。
だから、ブツけられちゃった後、調子崩しちゃったんだから、ナンバー
切る事になったのも、仕方なかったんだよ、ね。
でも、これでお別れだって思ったらたまらなくなって、最後に一つ、
わがままをしたの。
エンジン、掛からなくなったでしょう?
最後のドライブが、さよならの場所になるの、嫌だったから…
―続く
- 531 名前:白いFC 完結編 投稿日:02/09/16 09:17 ID:0MerzrMs
- それから、半年くらい経ったかな。
一週間ばかりバタバタと段ボールを運び出して、友達の車に積むあなた。
最後の荷物を運び出した夜。ああ、とうとうこの時がきたって思った。
あなたがシートに座って、キイを回す。ほんの半年前までの、いつもの動作。
でも嫌、エンジンは掛けてあげない。
牽引ロープのフックがガチャンと掛けられて、あたしは音も無く進む。
…ここは、どこ?家、の、庭?
峠から帰って駐車場に止めた後いつもしてくれたように、あなたが
ミラーをポンポン、とたたく。
「ここが新しいアパートだ。場所も確保した。いつになるか分からない
けど、必ずオーバーホールして、また走ろう」
…待ってます。ずっと。その日が来るのを、ずっと、ずっと…
- 581 名前:霊柩車 その2 投稿日:02/09/19 00:02 ID:5fhi6XC7
- 今日も今日とて死体運び。
運ちゃん次はどこへお迎えに行くんだよ…おいおい狭ぇよこんな路地入ってくのかい。
これだから新興住宅地って奴ぁ苦手だね。自慢のお飾りキズつけんなよ?
「どけどけどけーっVIP様のお通りだーっ」
っかやろー!糞ヤソ車、こんな狭いとこ入ってくんじゃねーっつの!
「何だ仲間か。そのアクセいーじゃん黒地にゴールドなんて超クール。どこで買ってもらったんだよ」
誰が仲間だ腐れDQN。俺様は市民の税金でドレスアップし放題の霊柩車様だ。
真似できるもんならやってみろってんだ。
おう、ここだな本日の会場は。んだよこの間はじじばばだらけで今日はガキだらけかい。
「おじちゃん、それかっこいいね」
誰がおじちゃんだゴルァ!…てどこだ?どっから声がしたんだ?
「おじちゃん。僕ここだよ、ここ」
足元?なんだ、車は車でもガキの足こぎ車じゃねーか。
だめじゃねーか坊主。今日はおもちゃの出る幕じゃねーぞ、何で片付けてもらわねーんだ。
「たっくんが出しっぱなしにしたから、僕お家に入れないの。おとーさんもおかーさんも
お家に入れてくれないんだよ。なんでかなあ」
そういや、あそこにもガキのおもちゃが…片付けろよなあ。おい坊主、お前のご主人どこいったんだ?
「わかんない。たっくんね、きのうのまえから見てないの」
何だと?おい坊主、どういう事だ?
「あのね、僕たっくんと遊んでたら、たっくんお外行っちゃったの。
おかーさんいっつもだめって言ってるのに、だめだよね?
そしたら、何かすごーくおっきい音がしたんだ。僕びーっくりしたんだよ」
そういや前の道、結構交通量多かったような…今日の葬式はまさか…
「今日はね、たっくんのお友達も、せんせーも、おじいちゃんもおばあちゃんも来てるんだよ!
たっくん絶対大喜びだよ!
でもね、たっくんいないんだ。かくれんぼかな?おじちゃん、たっくん知らない?」
坊主…お前のご主人はな…
- 582 名前:霊柩車 その2 投稿日:02/09/19 00:08 ID:5fhi6XC7
- 『嫌あー、たっくーんー』
「あ、おかーさんだ」
坊主、お前のご主人様はな。あの…お袋さんが抱いてるハコのなかで寝てるんだ。
「やっぱりかくれんぼだったんだ!おじちゃんすごいや何でわかったの?
たっくーん、おーいたっくーん、みーつけたー!出といでよー!」
お袋さん、息子さん寄越してくんねーか。安心しなって、俺が責任持って送ってやるからよ。
坊主、お前のご主人俺が預かるぞ。
「おじちゃんたっくんどこ連れてくの?」
すまねーが、たっくんは遠い所へ行かなきゃなんねーんだ。いつかきっと、お前にも判る日が来る。
「じゃ、僕もいっしょに連れてって」
だめだ。坊主は来れねーんだ。悪ぃがその代わり頼みたいことがある。
俺と一緒にクラクション鳴らしてくれねーか?
「うんわかった!お見送りだね?僕いつもやってるんだよ、たっくん幼稚園行く時に」
そーだ。思いっきり、たっくんに聞こえるよーなでっけー音でな。
空の上まで届くぐらい、でっけーでっけー音でだぞ。
おい、聞こえるかたっくん。俺らのクラクションが。
いい愛車を持ったな。
「たっくーん、早く帰ってきてねー!
おっきくなってレーサーになったら、一緒に走る約束、忘れないでねー!」
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