もしも車が話せたら より
- 726 名前:名無しさん@そうだドライブへ行こう 投稿日:02/04/09 01:07 ID:FnpYcjUm
- もうダメっぽいね。
あんなに大きな車とぶつかっちゃったんだもんね、しょうがないね。
私にはエアバッグが無いからあなたに大けがさせてしまうんじゃないかって
心配だったけど大丈夫みたい。良かったわ。
最後にあなたを守れたことが私の自慢だね。
あなたと最初に会ったのは雨が降っていた日の夕方だったね。
前のご主人様が新車を買ったので私は下取りに出されていたんだよね。
でも15年も前に作られたおばあさんだし人気が無い車だったから
誰にも見向きもされなかったんだよ。
取り柄と言えば車検が少し残っていたことくらいかな。
その車検が切れる頃には私の一生も終わるのね、なんて考えていたのよ。
そうしたら、あなたと店の人が私をジーっと見て、あなたは言ったわね。
「この車でいいです。」と言ったね。
値段が安かったし学生になったばかりのあなたにとっては入門としては
ちょうどいい車だと思ったんでしょうね。
でも本当に嬉しかったわ。妥協でもそんなことはどうでもいいの。
あれからあなたはとても私を大事に乗ってくれたね。
お金が無いから高いオイルも入れられないし、タイヤだって安いのしか買えなかった
けど、そんなことはどうでも良かったの。
車にとってご主人様と走っていることが一番嬉しいことなんだよ。
いろんな所に遊びにも行ったね。
私が行ったことの無い東京へも連れていってくれたよね。
お金が無くて高速道路には乗れなかったけど、あなたと二人で
冒険しているみたいでとても楽しかった。
私はおばあさんだから高速道路はあんまり得意じゃないしね。
途中のコンビニで何回も休んで、少し寝たりしながらやっと着いたよね。
初めて走る都会の道路はとっても怖かったけど、あなたと一緒だったから安心だったよ。
車検が切れれば私はもうおしまいかな、と思っていたけどあなたは
一生懸命アルバイトをしてもう一回車検を取ってくれたよね。
私、正直覚悟してたんだ。
だからあなたが貯めたお金を私のために使ってくれると知った時は本当に
嬉しかった。
この子のために一生懸命走って、守ってあげようって決めたんだ。
そろそろお別れみたいだね。
あなたは泣いているけど、私はちっとも悲しくないよ。
あなたを守れて死ねるんだもん。
今度は人気のあるかっこいい車を買いなさいね。
だってこの5年間、女の子を私に乗せたことなんてほとんど無いもんね。
あなたも立派な社会人なんだから、いつまでも私なんかに乗っていないほうが
良かったのかもしれないよ。
でも、時々でいいから思い出してね。
あなたのために一生懸命走っていた白い小型車がいたってことを。
じゃあね、さようなら。
- 653 名前:名無しさん@そうだドライブへ行こう 投稿日:02/04/04 21:47 ID:JziiGUvz
- ありがとう。ごめんね、もう動けないみたい。自分でもどこが病気か解からないよ。
この前の車検の時、ディーラーの人の話してました。もう古くて部品がないみたい。
最近は初めてあなたに会った時より運転が上手になって、気持ち良く走れました。
私の癖も、全て知っていてくれていた。
いつも週末は砂埃だらけのわたしを洗ってくれて、その後はドライブの日々でしたね。
助手席に乗る人は時々入れ替わりましたね。あの香水がキツイ人、あなたの趣味?
ごめん、実は嫌いだったんだよ。
初めてあなたに会った夜、一緒に駐車場で寝た事。
フロントバンパーをぶつけられた時、泣いてくれた事。
あまり高くはないけどオイルの交換はあなたがしてくれた事。
一晩中調子の悪いところを探し続けてくれた事。
同乗者がいない時、流す音楽はいつも静かな曲だった事。
急いでいても、信号の無い場所、わたろうとしてる人に道を譲る事。
まわりから古いから別のにしろと言われても、拒否し続けてくれた事。
あなたと一晩中走り続けて朝を迎え、空き地で缶コーヒーを飲んだ事。
あなたとの10年は ほんとうに ありがとう
- 707 名前:名無しさん@そうだドライブへ行こう 投稿日:02/04/08 14:58 ID:7gABpOlF
私がご主人様と初めて出会ったのは、2月の小雨のあの日でしたね。
貴方は私を見つけると、体の隅々まで健康かどうかじっくり見て下さいました。少し恥ずかしかったんですよ?
貴方は車を買うのが初めてだったのに、私の事をよく調べて勉強して来て下さいました。
納車前の健康診断をしている時だって、私を気遣って優しい貴方は何度も顔を見に来てくれましたね。
そして3月の半ばに、遂に貴方が私のご主人様になってくれましたね。
とってもはしゃいで、そのまま一緒にお出かけしてしまいました。
最初は意見が合わなくて喧嘩も沢山しましたけれど…。
それでも、3ヶ月もすると、私達は本当に気が合いましたね。
まるで…心が1つになったように…。貴方と出会えて、本当に嬉しかったんですよ。
いつまでも…貴方とのこの時間が…ずっと、ずっと続けばいいな…って心からそう思ったんです。
でも…あれは私がご主人様の元に来て、4ヶ月目になる前の日でしたね…。
いつものように、2人で一緒にお出かけした…私達の最後のドライブになったあの日。
自分の体よりも、私の体を気遣ってくれた貴方…。少しは自分の体も気遣って下さいね。
入院した私の元に、貴方は何度も何度もお見舞いに来てくれた貴方…。
そして…私の体がもう2度と元に戻る事がないと知ってしまった貴方は、
人目も気にせずにずっと「ごめんね…ごめんね…」って大粒の涙を流してくれました…。
でも…私は…貴方と出会えて本当に良かった…。短い間でしたけど…私は貴方と一緒にいられて、本当に幸せでした。
…私は貴方を忘れない。ずっと、ずっと忘れない…。だから、貴方も変わらない貴方でいてください。
貴方がいたから…。私が私でいる事が出来たんですから…。
- 737 名前:名無しさん@そうだドライブへ行こう 投稿日:02/04/09 16:34 ID:FnpYcjUm
- さて、そろそろ掃除も終わったのかな?
私なんて営業者なんだからそんなに丁寧に掃除しなくても
良かったのに。
でもやっぱり綺麗にしてもらうと気持ち良いね。
これで胸を張って次の会社に行けるってものだね。
私があなたの会社に来たのは確か10年前だったかな。
その頃は私もまだ2年目のピカピカだったよね。
そしてまだ新入社員のあなたの専用の車になったんだよね。
正直言って不安だったよ。
だってあなたは学生時代は東京にいたから車の運転はほとんど
した事が無いんだし、それに仕事だって覚えることがいっぱいだったもんね。
初めの一年くらいは本当に辛かったよね。
お得意さんから私のところへ帰ってくるたび溜め息をついて、
こんな会社やめてしまいたい、そう言っていたね。
時には目に涙を浮かべながら帰ってきたこともあったね。
でも私のエンジンをかけるとまた次のお客さんのところへ
走って行ったよね。
私、あなたのそういう真面目なところ好きだったよ。
他の新入社員たちはサボってる人も多かったって仲間に聞いたもの。
- 738 名前:名無しさん@そうだドライブへ行こう 投稿日:02/04/09 16:34 ID:FnpYcjUm
- そうそう、親元から離れて暮らしているあなたはお金があんまり
無かったから、プライベートでも私を使ってくれたよね。
ラジオはAMしか入らないし、シートだってナイロンだし、
いい所なんてほとんど無いのに昼も夜も、休みの日もいっしょ
にいてくれたよね。
時々乗せる彼女には不評だったみたいだけど、そのたびにあなたは
私のことを庇ってくれたよね。
あなた、女を見る目があるのかもよ?
だって私みたいに、燃費はいいし軽いし、それでメンテナンスは
ほとんどしなくていいのに壊れないしすねない女って最高でしょ?
そんな女の人をちゃんと見つけるのよ。
あの彼女はダメ。私とは正反対ね。例えるなら外国の高い車ってとこかしら。
オイルはいっつも量販店の量り売りのばっかりだったし、
エレメントは3回に1回しか変えてくれなかったけどそれでも
上出来よね。
他の仲間なんて車検から車検まで一回もオイル交換してもらえなかった
んだもん。
安くてもあなたのお金でやってくれたんだもんね、感謝してるよ。
仕事を初めてからしばらく経つとあなたは本当にしっかりしてきたね。
なにせずっと一緒にいるんだから親のような心境だったわよ。
新しく入ってきた新入社員にあなたが教育しているところを見ると
なんだか変な気持ちにもなったよ。
だって私の中じゃまだまだ子供なのにね。
月日の経つのって早いものね。
そんなあなたもこれからは管理職になるんだよね。
まじめなあなたの事だもの、きっと大丈夫。いい先輩になれるよ。
私と一緒にやってきたことをちゃんと教えていくんだよ。
後輩にも、車のメンテナンスのことを教えてあげてね。
そうそう、私は今月でこの会社とお別れなんだけど、まだまだ
働けることが決まったの。
今度は、会社を興したばっかりの若い子の所に行くのよ。
その子は会社のためにいっぱいお金を使っちゃったから車は私みたいな
おばさんしか買えなかったんだけど、すごく頑張り屋さんなんだって。
そりゃね、あなたに比べたらまだまだ頼りないだろうし私も不安だけど、
若い時のあなたと走りまわっていた頃みたいにもう一回がんばって
みるつもり。
同じ街の会社だし、もしかしたらまた会えるかもね。
道路ですれ違ったら少し私を見てみてね。
特徴も無いし美人でもない私だけど、ずっと一緒にいたあなたなら
きっと分かるよね。
あら、10台くらい新しい車が来たね。
あれがあなたの会社で買った車ね。
みんな若くて羨ましいよ。
きっとあの子達も私達みたいに色々な経験をこれからしていくんだね。
それじゃ、またね。
とりあえずさようなら。
- 766 名前:名無しさん@そうだドライブへ行こう 投稿日:02/04/11 03:22 ID:7ldsmMXA
- ボクは、マークUワゴンの特別仕様車。「特別」って言ってもカッコよかったり
豪華だったりするわけじゃないよ。だってそばにボクの標準仕様の友達が
いてるけど、見た目全く一緒だもん。
でもボクは「特別」仕様車。それは運転する人が右半身だけで運転できるように
特別注文された「特別」仕様車なんだよ。
ボクのご主人様はおとうさん。ずっと一生懸命お仕事がんばってた人だったんだけど
病気で左半身のほとんどが動けなくなったんだって。それからボクを買ってくれたのは
その息子さん(ボクは「若」って言ってるけどね)。ずっとおとうさんといっしょにがんばって
いたけど、今はおとうさんのつくった会社を一生懸命切り盛りしている。
ボクが生まれてきた経緯だけど、おとうさんはクルマを運転するのが大好きだったんだ。
でも、病気で左半身が動かなくなってから、別人のように元気をなくして、あまり
リハビリも進まなかったんだって。で、若がボクを注文して買ってくれて、おとうさんに
「ちゃんとリハビリして、こいつで現場とかに連れて行ってよ。もう買っちゃったから、
絶対に運転してくれよな!」って紹介してくれたんだ。若は恥かしがり屋だから、
こんな乱暴な言い方をしちゃったけど、ほんとうにおとうさんを気遣ってたんだと思うよ。
だって、ボクが今いる場所には、前は若のトレノ君がいたらしいけど、ボクの下取りに
出ちゃったらしいんだよ。トレノ君と会うことはできなかったけど、標準仕様の友達が言うには、
本当にうらやましくなるくらい、大切にしてもらっていたらしいよ。
で、トレノ君がいなくなる前の日、若はトレノ君に乗り込んで、ずっと泣いてたって・・・
それでも、おとうさんを元気づけてあげようとしたんだから・・・
それからのおとうさんは、ボクの室内で一生懸命リハビリしてた。はじめはボクに乗り込んだり
降りたりする練習から初めて、アクセル・ブレーキを踏む練習、最後はハンドルをまわす練習を
ガレージに止めたままでしてたんだ。おかげで、走行が100キロもいかないのに、
ボクの運転席側は傷がたくさんできちゃった。おとうさんはその度に「ごめんよ、ごめんよ」と
言ってたけど、ボクは名誉の負傷だと思っている。
それに、日を追うごとにおとうさんが元気になっていって、ボクもとってもうれしかったんだ。
- 767 名前:名無しさん@そうだドライブへ行こう 投稿日:02/04/11 03:22 ID:7ldsmMXA
- ある日、若がボクの室内でリハビリしているおとうさんのところに来て言ったんだ。
「タバコ買いに行くから、運転してよ」って。本当に若らしい頼み方(笑)。
おとうさん、少し考えていたみたいだけど、運転するための手続きも終わっていたし、
おとうさんはボクを運転してくれたんだ。
家の近所をほんの10分ほど、ゆっくりと運転しただけだったけど、さすがはもともと車好きの
おとうさん。運転が上手です。若もとても安心したみたい。
それからというもの、若は車と人が少ない時間を考えて「どこどこに連れていってくれ」って
短いドライブに行ってた。おとうさんも、よろこんで乗ってくれてたし。
あっ、おとうさんはさすがに一人では運転しなかったよ。若か、お母さんと一緒の時だけ
運転してたんだ。
そんな感じで、ボクはゆっくりゆっくり走っていたんだけど、ある日、若がボクに乗り込んできて、
おとうさんが入院したことを知らされたんだ。若はボクの特別なハンドルを触って、ボーっと
していたけど、その時には若は知っていたんだろうね。おとうさんが長くないことを。
それからしばらくして、若が普段着ない黒いスーツと黒いネクタイでボクを運転してくれたんだ。
実は、若がボクを運転するのは納車の時以来だから2回目だったんだ。もう、ボクにも
何があったかわかった。でも、若もボクも、その時は実感がなくて、その時は普通にしてた。
その日から1週間ほどたって、少し落ち着いたとき、また若がボクに乗り込んできて泣いてた。
ボクも悲しかったけど、多分、若が一番悲しいだろうから、ボクはこらえたよ。
その時に若が言ったんだ。「このクルマは親父のものだけど、これからずっと俺が借りる。
ちゃんとメンテするから、借りとく。」って・・・何度も何度も・・・
天国のおとうさん、もうすぐ、おとうさんが亡くなって2年がになるけど、ボクは普通の人だと
少し運転しにくい特別仕様のまま、若が借りてボクを運転してくれています。
(あっ、おとうさんが嫌いだった青い車椅子のシールは若がはがしちゃったけど)
とても大切にしてもらってます。
若はしばらく一人でボクに乗っていたけど、今では助手席に女の人を乗せて、いろいろな
ところに連れていってくれます。若は来月結婚するみたいです。よかったですね。
「借り物を勝手に売ることはできないから」って、ボクにも乗り続けてくれるみたいです。
だからこれからも、ボクと一緒に若を見守ってくださいね。よろしくです。
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