PickUp #109  2002.09.11   <- Prev  Home   Next ->


写真屋の女子店員と客との恋愛は可能か? より

647 :名無しさん脚 :02/09/02 22:22 ID:60T2epEt
まだ私が自分のことを「僕」と呼んでいた年齢の頃です。
写真が好きで暇を作っては撮影していたものの、学生なので当然の
ことながら金はなく、趣味と実益を兼ねて写真屋でアルバイトを
していました。

その頃のDPEは今と金額的には変わらなかったような気がします。
ですから、同時プリントというのは考えられず、まずはコンタクトプリント、
しかもモノクロでコマを選んで焼き増しをするのが一般的でした。
このような状況では、当然、写真の一コマに対する情熱は、今とは
比べようもありません。

ある意味、しみったれた背景のある情熱ですが、それでも、彼女との
思いを繋いでくれた思いですので、そうそう馬鹿にする訳にもいかないのです。

648 :名無しさん脚 :02/09/02 22:31 ID:+O57xxoj
私が店番をしているとき、彼女が現れました。
一眼レフのカメラを持って、何となく、入りづらそうでした。
年齢が近かったせいもあると思います。それでも、彼女は意を決して
店の中に入ってきました。

彼女の話を聞くと、カメラが壊れているようなのです。
そこで、私がカメラを手に取りました。
カメラを見ると、ニコマートELでした。
しかし、その刹那、彼女は突然、泣き始めたのです。

はっきり言って、私は面食らいました。
初対面の女性が理由も分からず泣き出したのですから当然です。

それほど忙しい店でもなかったのですが、世間の目も気になります。
取り敢えず、カメラを見てみますから、と言って、店の多少奥まった
場所にある椅子に彼女を案内しました。

649 :名無しさん脚 :02/09/02 22:43 ID:1421Xt0L
女慣れしていなかった私は、どうすることもできませんでした。
彼女を泣かすにまかせ、自分は渡されたカメラの故障個所を調べる
ふりをして、機械を弄んでいたものの、気はそぞろです。

そんな折、彼女は泣くのを我慢し始めました。
「ごめんなさい。それ、父の形見なんです。
父は写真が好きで、私にも随分、写真のことを教えようとしていました。
でも、私は冷たくあしらうだけで・・・・・。だけど、つい先日・・・。」

残されたアルバムを見ると、彼女の写真がたくさんあったらしいのです。
それを見るにつけ、形見のカメラを使うことが供養になると考えたらしく、
使おうと思ったらしいのですが、露出計が働かないようなのです。

露出計を見てみると、確かに動きません。
でも、パイロットランプで調べてみると、単に電池切れのようです。
しかし、そこで私は違和感を感じました。
露出計がおかしいと即座に判断できるのに、なぜ電池切れと考えつかない
んだろうか。

655 :おぢさん :02/09/03 21:21 ID:ImqVn4lg
「多分、電池切れだと思います。新しい電池を入れてみますね。」
彼女は、きょとんとしています。
「それって、電池を使うんですか?電池が入っているような場所が
見つからなかったものですから。」
典型的なニコマートの罠です。
自分の愛機もニコマートだったとは何という偶然でしょう。
(さもなくば、分かりませんよ普通。)

私はレンズを外し、ミラーを上げ、電池ボックスの蓋を開けて
彼女に見せました。
「こんな場所にあるんですね。」
期待通りの反応です。笑顔も出てきました。

656 :おぢさん :02/09/03 21:23 ID:ImqVn4lg
彼女は既に泣き止んでいたものの、まだ目は腫れぼったい感じです。
そんな目で外を歩かせるのも気の毒なので、お茶でも出すことにしました。
(可愛い子でしたし。)

お茶を飲みながら話を聞くと、彼女はお父上から、写真撮影に関する
基礎的なことを教えてもらっていたようでした。
ただ、嫌々付き合わされた感じなので知識も表面的なものでしかなく、
教えられたことを鵜呑みにするだけだったようです。

露出計も、追針式の針とシャッタースピードを示す緑色のマーカーを合わせる
ということを儀式のようにやっていただけで、どういう意味があるのかも
良く分からなかったようです。

そこでようやく、露出計が動かないと判断できたにもかかわらず、
電池切れという単純な原因に行きつかなかったことにも合点がいきました。
写真の基礎から教えてあげようかな、とも思いましたが、最低限の知識は
あるようです。まずは試行錯誤した方が良いでしょう。
下手に教えて嫌われてもいやですし。

657 :おぢさん :02/09/03 21:23 ID:ImqVn4lg
「これ、使ってみてください。1日に最低1〜2枚は撮るようにして
みると良いですよ。」
そうアドバイスして私はフィルムを1本渡しました。

「おいくらですか?」
「今回は良いですよ。まず、撮影してみて下さい。」
「でも・・・・・。」
「タダだと思えば、シャッターも切りやすいでしょ?まずは試しに。」
「ありがとうございます。」
困ったような嬉しいような、複雑な顔です。

「フィルムの入れ方は分かりますか。」
「はい。」
彼女はそう言うと、結構器用にフィルムを装填しました。
「父にしこまれたんです。その時は嫌でしたけど。」

彼女は店から出掛けに、にこっと笑うと一礼して行きました。
彼女に渡したのは10枚撮りのフィルムだったと思います。
1日に1〜2枚撮れば、1週間後には来てくれるかなあ、
と思いながら、見送ります。

ふと気付くと、電池代を貰うのを忘れていました。

663 :おぢさん :02/09/05 22:39 ID:FtlDWGJz
それから1週間後に彼女は来てくれました。
結構、にやけてしまったかもしれません。
彼女も微笑み返してくれました。

「この前はありがとうございました。」
「電池代をいただいてません」などとは口が裂けても言えません。
「いえ。どういたしまして。どうですか?上手く撮れましたか?」
「さあ、どうでしょう?」
そういうと、彼女はフィルムをカウンターの上に出しました。

いつもの事務的作業です。あの頃は、納期が中1〜2日ほどだったと思います。
仕上がる日付を伝えた後、「お名前と電話番号をお願いします。」
と言ったところで、自分がとても幸運なアルバイトをしていることに気付きました。
(当時はストーカーなどという単語自体が存在していませんでしたし、
そういう発想もありませんでした。)

結局、その日の会話はそれだけ。
でも、2、3日後に会えることはほぼ確実なのでそれで良しとしようと思いました。
少なくとも、名前と電話番号は分かりましたし。

664 :おぢさん :02/09/05 22:40 ID:FtlDWGJz
それから2日後、彼女は写真を取りに来ました。
「これで良いですか。」と取り出したのはモノクロのベタです。
ええ、と彼女は言い、私は金額を伝え、彼女はその代金を支払うという
事務的作業はあっという間に終わってしまいました。

何か話し掛けようと思ったのですが、思い浮かぶのは、
「フィルムはいかがですか?」という情けないセリフだけ。
彼女は「10枚撮り1本ください。」と言い、先程と同様の
事務的やり取りが続きます。でも、それが限界。
用事が終われば彼女は店を出ます。当たり前です。
でも、彼女は店から出掛けに、また、にこっと笑うと一礼してくれました。

665 :おぢさん :02/09/05 22:41 ID:FtlDWGJz
それから、何度か全く同じやり取りがありました。
ただ、不思議なことに彼女はコンタクトプリントだけで、
大伸ばしは勿論、手札やL判にすらしないのです。
そこで、私はなぜ引き伸ばさないのか彼女に聞いてみることにしました。

「○○さん、引き伸ばさないんですか。」
「え?ええ。だって、未だ全然駄目なんですもの。」
「でも、小さいままだと何も分かりませんよ。」
「じゃあ、どれを引き伸ばしたら良いか、見ていただけますか?」

私は、コンタクトプリントの中から良さそうなものを3コマほど選び、
彼女に勧めてみました。彼女は、それを取り敢えずL判で焼き増しすると
言ってくれました。焼き増しの納期も中1〜2日です。
同じ様なやり取りを、また何度か繰り返しましたから、これで彼女に会える
のは週に2回のペースになったわけです。

現像+コンタクトプリント、そして焼き増し、というパターンだったから
こそ、こういうペースで彼女に会うことができたのだと思います。
今、主流の同時プリントだったら、こうはいかなかったでしょう。

666 :おぢさん :02/09/05 22:43 ID:FtlDWGJz
あるとき、私はもっと大きく写真を引き伸ばすことを勧めてみました。
「でも、大きく伸ばすと高いし・・・・・。」
「だから、今までで一番良いと思うのだけ、引き伸ばしてみたらどう?」
「じゃあ、また、選ぶのを手伝ってもらえます?」
私の答えは勿論Yesです。
ただ、枚数が多くなると時間がかかりますし、いくら忙しくない店とはいえ
彼女にかかりきりになるわけにもいきません。
そこで、次の日、近所の喫茶店で待ち合わせることにしました。

668 :おぢさん :02/09/06 21:40 ID:z6o7fsll
翌日、喫茶店では話しが弾みました。
写真に写った風景を、その時の状況も合わせて、彼女は生き生きと語ってくれました。
二人で色々と迷いながら1枚だけ写真を選ぶと、その後は、お互いのこと含めて
取りとめもない話が続きます。彼女も学生らしいこと、お父上を亡くされた後、
かなりショックだったこと、そして、そのショックから立ち直るのに、写真が
役に立ったことを教えてくれました。そして彼女は、今度は私の写した
写真も見てみたいと言い、また、次の週、会う約束をしました。

それからは少し違った形で、週に2回のペースで会うようになりました。
1回はお店、もう1回は喫茶店です。
そして、一緒に撮影に出歩くようになるのも時間の問題でした。
今、考えると一緒に撮影に出歩くというのは「デート」と言えるのかも
しれませんが、当時はそんなつもりは全くなく、二人とも写真に対して
真摯に向き合う時間を共有しているだけでした。
勿論、私は彼女に好意を持っていましたし、彼女も同じだったと思いますが、
そういうものを超越したものがあったように感じます。

669 :おぢさん :02/09/06 21:43 ID:z6o7fsll
そんなある日、彼女がリバーサルフィルムを使ってみたいと言い出しました。
それまでにリバーサルフィルムを使ったことはあったのですが、ライトボックスも
ルーペも持っておらず、いわゆるビューワでしか見たことがなかったために
どうもせせこましく、好きになれなかったのです。
でも、折角だから私も彼女に付き合ってリバーサルを使うことにしました。

その現像が仕上がった日、私は二人分のスライドと例のせせこましいビューワを
持って、いつもの喫茶店へ行きました。彼女が待っています。
「お待たせ。こんなんで見るんだけど、良いの?」
私はビューワを彼女に差し出しました。
「あのね、家にプロジェクタとスクリーンがあるんだけど、そっちを使わない?」
彼女の家にそんなものがあるなんて初耳です。
「うん。良いけど。」
「じゃあ、行こ。」
早速、喫茶店を出ます。私、コーヒーの注文すらしていなかったんですが。

彼女の家に着きました。
彼女の家は「お屋敷」というほどの大きさではないものの、普通の家よりは
十分に大きく、ちょっと面食らいました。
彼女の案内で家に入ります。応接室のような部屋に案内されました。
彼女は一旦、部屋を出ましたが、やがてスクリーンとプロジェクタを持って
戻ってきました。
二人でセッティングを終えると、カーテンを閉じ、部屋を暗くして投影開始です。
まずは彼女の作品を、そして次には私の見るのが、今までの順番でした。
今回もその順番で、二人の作品の中から、お互い1、2点を選びます。
それが終わると、彼女はもう1本分、見たいスライドがあると言いました。
ちょっと不思議でしたが、それを見ることにしました。

670 :おぢさん :02/09/06 21:45 ID:z6o7fsll
スクリーンに映し出されたのは彼女です。
綺麗でした。
普段の表情の彼女がとても美しく映っています。
スクリーンを通じて、撮影者の彼女への愛情が分かります。
私の彼女への思いは、既に好意から愛情に変わっていましたが、
私には彼女をこんな風に撮影できる自信は全くありません。
少し、心が苦しくなりました。

「これね、お父さんが最後に写してくれたものなの。
お父さん、これが上がってきたとき、一緒に見よう、って言ってくれたんだけど、
私、その時、冷たく『今度ね』って言ったきり・・・・・。
その晩、お父さん、死んじゃった。」

私は何も言えませんでした。
彼女のすすり泣く音が聞こえてきます。
今度は、彼女を受けとめてあげることができました。
私は彼女に近づき、そっと抱きしめます。
彼女のすすり泣きは、大泣きに変わりました。

やがて、彼女は泣き止むと、小声でこう言いました。
「ごめんね。」
「うん。大丈夫だよ。」
彼女は私を見上げます。
私は彼女に軽くくちづけをしました。
それは、ごく自然な行為に感じられました。
そして、彼女は私に強く抱きついてきました。
私は彼女を強く抱き返し、もう一度、くちづけをしました。

675 :おぢさん :02/09/07 17:56 ID:57UFo0iQ
それ以来、私は彼女の家にちょくちょく遊びに行くようになりました。
と、いうのも彼女の家に行くもう一つの理由ができたからで、
それは彼女の家にある暗室を使うためです。
彼女の亡くなったお父上は、余程、写真が好きなようでした。
彼女ももっぱらモノクロを使うようになり、フィルム詰め、現像、
プリントも二人でやるようになりました。

何かを期待している方には申し訳ないのですが、暗室内に二人でいても
お互いに触れ合うようなことは一切しませんでした。
ある意味、暗室内では二人とも緊張しており、そっちの方の考えは
発想としてでてこなかったのです。話は楽しくしてましたが、
撮影の時と同じく、二人で写真に対して真摯に向き合う時間を共有
していたのでしょう。
ただ、別れ際には必ずくちづけをするようにはなっていましたが。

676 :おぢさん :02/09/07 17:59 ID:57UFo0iQ
彼女の家の話しをしましたので、転じて、私の当時の住まいの話しを少し。
私が住んでいたのはオンボロのアパートでした。
他の場所に引っ越しても良かったのですが、家賃の安さが魅力で
住みついていました。しかも、空き部屋が結構あったものですから、
大家と交渉して半額の値段でもう一部屋借りていました。
但し、寝泊り、煮炊きはするな、という条件でしたので、
もう一部屋は物置代わりです。

そして、彼女と出会うちょっと前から思いきって、もう一部屋借りる
ことにしていました。スタジオ用です。
部屋自体は狭かったので大した撮影はできないだろうとは思ったのですが、
自分の城のようなものが欲しかったんだと思います。
それでも、知恵と工夫で代用品とはいえ一応の機材を揃えました。

彼女の家を良く訪問するようになると、逆に彼女の方から私の部屋を
訪ねてみたいと言ってきました。
正直、あのオンボロアパートに彼女が来ると、完璧に「掃き溜めに鶴」状態
ですので気乗りはしなかったのですが、断る理由も見つからなかったので
一緒に部屋に行きました。

狭い部屋です。「居室」はお世辞にも整頓されているとは言えません。
実際、一番居心地が良いのが例の「スタジオ」ですので、
あっという間に、居場所を変えました。(「物置」は論外。)

ここら辺の我々2人の感性は似ていたのかもしれません。
彼女は、その「スタジオ」が妙に気に入ったようです。
私も撮影を手伝ってくれる人がいれば助かりましたし、
彼女は彼女で室内撮影というものもやってみたかったらしいのです。

二人で室内撮影を行い、二人で散歩がてら撮影に出かけ、二人で暗室作業をする
今度は、こんなパターンになっていました。

677 :おぢさん :02/09/07 18:01 ID:57UFo0iQ
ある日のこと、彼女が真剣な眼差しで私に話しかけてきました。
顔が少し上気しています。
「お願いがあるんだけど。」
「なに?」
「裸、撮ってみたい。」
「僕の?」
「うん。」
彼女の気持ちは分かります。
やはり、人間の肉体を描きたいというのは行きつくところなのかもしれません。
その頃の私の体は、自慢できる程の代物ではありませんでしたが、
今のように弛んでいるわけでもなく、好き好んで人様に見せようとも思わない
反面、別に見られても気にはなりませんでした。

でも、この時、少し意地悪をしてやろうと思いました。
「君のも撮らせてくれるなら良いよ。」
彼女は半分睨みつけるような真剣な眼差しで答えました。
「そのつもりよ。」

686 :おぢさん :02/09/07 23:21 ID:WnFx42Pg
これ以上の描写はご勘弁ください。
蛇足ですが、その時に撮影したフィルは当日のうちに現像しようと
思っていたのですが、結局、現像したのは翌日でした。

最後に、今、我が家の防湿庫には2台のニコマートが並んでいます。
メインのカメラではなくなったものの、手入れはしていますので
まだまだ現役です。

これを書きつつ思ったのですが、彼女とは随分と二人きりで撮影に
出掛けていませんでした。子供にも手がかからなくなった今、
久しぶりに彼女、いえ、愛する妻と出掛けようと思います。
我らが青春のニコマートを持って。




     

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